2011年10月13日木曜日

鏡としての月

一九四二年七月、ペドロ・エンリーケス・ウレニャはサントスの図書館で、バートンの手稿を発見したが、そこには、東方においてイスカンダル・ス・アル=カルナインすなわちマケドニアの双角のアレクサンドロス大王のものとされている鏡のことが書かれてあった。その鏡には全世界が映っていた。バートンはほかにも同じようなからくりの鏡—カイ・ホスルーの七重の盃、タリク・ベンセヤドがある塔で発見した鏡(『千夜一夜物語』第二七二夜)、サモサータのルキアノスが月の中に見ることができたという鏡(『ほんとうの話』第一部、第二十六章)、カペルラの『サテュリコン』の第一書でユピテルのものとされている鏡のような槍、《まるくくぼんだガラスの世界にも似た》マーリンの宇宙鏡(『フェアリー・クイーン』第三巻第二章第二十九行)—のことを述べて次のような奇妙な言葉をつけくわえている。「しかしながら、これらの鏡は(実在しないという欠点のみならず)単なる光学器械でしかないということだ。…」

ボルヘス - アレフ

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