2012年7月26日木曜日

緑青

緑青を作るには、葡萄の酸を銅版に注いで腐食させてやる。こうしてできた緑青が、こんどは緑の塗料原料として欠かすことができなくなる。滅びを表象するのに、一般の場合、この腐食という概念ほど適切なものもないものだが、しかし、逆に緑を色として見る場合、緑の観念ほど人生の豊饒を目も絢に示唆する色もないだろう。緑こそは、万象を孕む《自然》そのものの奇しき印形ではないのか?

ハーマン・メルヴィル - ピエール

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