2009年3月26日木曜日

消えようとして笑う



読んでみたい本、
北杜夫の幽霊―或る幼年と青春の物語ー
「ママがそう言ったわ。気の毒な人にだけ、幽霊が住み込んじゃうんだって。あなたは気の毒な人だって」
彼女はまた笑った。まるで誰かに喉かなんぞをくすぐられたときのように笑ってみせた。
「僕も幽霊を見るよ」
「そう?」
少女はまじまじと、つぶらな、まだすこし虹彩のあおみがかった目を瞠いて、こちらを見上げた。どことなく、気の毒そうに。

串田孫一の山のパンセと、鳥と花の贈りもの

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