2011年8月19日金曜日

個人的抽象

ラテンアメリカ文学のアンソロジーを読了。
お目当てのフェリスベルト・エルナンデス"水に浮かんだ家"と、アドルフォ・ビオイ=カサーレス"パウリーナの思い出に"が素晴らしく良かった。

"パウリーナの思い出に"より
何年ものあいだ、ぼくはその夕方のことを思い出した。その後の孤独な日々よりも悲しい別離のときのほうが、パウリーナとともに過ごせたせいで、まだしも慰めが見いだせたので、あれこれ思い返しては、何度もそのときを生きたのだった。

あとがきより
「ビオイ=カサーレスのテーマはコスミックなものではなく、形而上学的なものと言えよう。つまり、肉体というのは想像上のものでしかなく、われわれはその幻影の圧政下に生きているのである。そうした中で、愛は特権的な認識であり、愛を通してわれわれは世界の現実だけでなく、自分自身の現実をも全体的、かつ明晰に把握することができるのである。つまるところわれわれは影を追い求めているにすぎないのだが、そのわれわれ自身もまたじつは影でしかないのである」(O・パス)

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